仙台高等裁判所 昭和29年(う)462号 判決
刑法第五十四条第一項後段に規定する「犯罪ノ手段若クハ結果タル行為」とは、抽象的に観察して、ある犯罪の性質上その手段として普通に用いらるべき行為又はある犯罪より生ずる当然の結果たる関係がある場合であることを要する。原判決は原判示被告人が窃盗の目的を以て原判示住居に侵入し、古新聞紙に点火して室内を照らし物色中、家人に誰何されて右新聞紙を投棄て逃走した結果、その過失により右新聞紙の火から衣類に燃移り更に右住居の一部を焼燬した事実を認定した上、右住居侵入、窃盗未遂及び失火の三つの罪につき、刑法第五十四条第一項第十条を適用して一罪とし、結局最も重い窃盗未遂の罪の刑に従つて処断している。原判決は右の如く刑法第五十四条第一項とのみ判示し、その前段であるか後段であるかを明かにしていないが、これらが観念的競合の関係にないことは明白であるから、原判決は住居侵入と窃盗未遂との間及び住居侵入と失火との間乃至は失火と窃盗未遂との間に牽連関係ありとして処断したものと解するほかはない。ところで、住居侵入と窃盗未遂とは牽連犯となること勿論であるけれども、住居侵入と失火との間又は失火と窃盗未遂との間にはその性質上通常用いらるべき手段又は当然生ずる結果たる関係があるものとは到底認むるを得ない。されば、原判決は刑法第五十四条第一項後段の解釈適用を誤つたものであつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。
(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)